大気の鉛直構造③ 成層圏

「天気を予測する」を目標に

成層圏とは

ここでは成層圏の特徴を学びます。

地球大気のうち、対流圏の上にある層のことです。

成層圏(stratosphere)の名前の由来としては、ストラト:層という意味があります。成層圏は、上下方向においては、空気を混ぜ合わせる風や乱気流がないので、下層には冷たくて重い空気あり、上層には暖かくて軽い空気があります。大気の層として安定しているといえます。ただし、水平方向の大気の運動は大規模に起きています。

成層圏を学ぶときに、オゾン層の学習は切っても切り離せない関係にあります。オゾンの存在が、成層圏を定義づける温度変化(上空ほど温度が上昇する)を作り出すからです。

また、大気中にある100万個の気体分子のうちの1個であるオゾンがなぜ問題にされるかというと、オゾン層が太陽からの紫外線をほとんど吸収してくれているからです。強い紫外線は人間はじめ地球上の生物に有害となります。オゾンの出現は、「地球大気の起源」においても重要な過程です。

では、成層圏とともにオゾン層についても学んでいきましょう。

①成層圏の厚さ

成層圏は、対流圏界面高度から約50kmまでの大気層をいいます。「対流圏」の項目でも記したとおり、日々の気象現象のほとんどは対流圏で起きていますが、成層圏は空気密度が小さいために、対流圏の運動が成層圏の大気の運動に伝搬した場合に、大気運動のスケールが増幅される性質があります。

②成層圏の気温分布とオゾン層の関係

成層圏の気温は、以下のようになっています。

  • 下層(高度10〜20km付近)…温度変化が小さく、ほぼ等温層
  • 中上層(高度20km〜)   …上層ほど気温が上昇

対流圏で生活している私たちにとっては、疑問をもつ温度変化です。

NASAのホームページでは、成層圏の説明において、以下のようにユーモアを持って記載されています。

もし私たちが成層圏の山に登る場合は、頂上に近付くにつれて、防寒着を着るのではなく、脱ぐ必要があります。しかしそれについて心配する必要はありません。成層圏に達する山は、地球上にありませんから。

NASA Space Place

上層ほど気温が高くなるということは、大気を暖める熱源が存在することを意味します。それがオゾン(O₃)です。

ただし、オゾン密度が最大の場所=最も高温、というわけではありません。オゾン密度が最大の場所は高度25km付近ですが、最も高温な場所は成層圏界面である高度50km付近となっています。

オゾン分布
参考資料:気象庁HP

この理由を学ぶときに必要な考え方が、熱容量です。熱容量とは、物質の温度を1℃高くするのに必要な熱量をいいます。同じ物質であれば、密度が大きいほど熱容量は大きくなります。

成層圏の密度はどのようになっていたでしょうか?

大気は、高度80kmまでは組成はほぼ一様であり、また空気密度は上層ほど小さくなっています。つまり、成層圏も上層ほど空気密度が小さく薄い空気ですから、熱容量も小さくなります。ですから、オゾンによる紫外線吸収が成層圏全体で起こっているとき、成層圏の最上層である成層圏界面が最高気温となっています(定義としては逆で、最高気温となるところを成層圏界面といいます)。

③オゾン生成のメカニズムと、生成される場所

オゾン生成のメカニズム、紫外線吸収

大気中の酸素は、酸素原子(O)が2つ結合したものです。オゾン(O₃)は、酸素原子が3つ結合したものです。大気中のオゾンは、大気中の酸素から作り出されます。

この反応のときに、波長240nmよりも短波長の紫外線が使用されます。この反応が大気上層で発生するため、波長240nmよりも短波長の紫外線は地球上には届きません。

さらに生成されたオゾンは不安定な物質であり、波長240nm〜320nmの太陽紫外線を吸収してもとの酸素に戻ります。

すわなち、大気中では、①酸素が分解されてオゾンが生成される反応、②オゾンが酸素に戻る反応ともに、太陽の紫外線を吸収することで連続して発生しています。このため、地上には波長300nmよりも長波長の太陽光しか到達しないのです。

オゾンが生成される場所

主に低緯度帯の成層圏です。ここで生成されたオゾンは、成層圏における大気の循環によって輸送されることになります。

④成層圏における運動、オゾンの輸送

成層圏は、鉛直方向には安定していますが、水平方向の大気の運動は大規模に起きています。

ブリューワードブソン循環
参考資料:気象予報士かんたん合格テキスト

ブリューワードブソン循環

 成層圏下層 …低緯度から両極地方へ向かう大規模な南北循環

 成層圏中上層…夏極から冬極に向かう南北循環(子午面循環)

この2つの循環を合わせてブリューワードブソン循環といいます。この循環により、成層圏の低緯度で生成されたオゾンは、冬の高緯度地方に輸送されます。

オゾンについては、地球環境問題にも深く関わってきます。ここでは、「成層圏」としてメインに扱うこととし、オゾンについてはまた別項「オゾン層」で学んでいきたいと思います。

⑤成層圏で起きる現象

こちらについても別の項で学びたいと思います。ここでは名称のみ挙げておきます。

  • 成層圏突然昇温
  • 成層圏準2年周期振動(QBO;quasi-biennial oscillation)
  • 真珠雲

成層圏発見の歴史

今回学んだ成層圏は、どうやって発見されたのでしょう?

発見の経緯を別頁でまとめていますので、ぜひご参照ください。

  1. テスラン・ド・ボール Léon Philippe Teisserenc de Bort
  2. リヒャルト・アスマン Richard Aßmann

参考文献

① 小倉義光:一般気象学, 第2版補訂版第5刷,東京大学出版社(2019)

② NASA Space Place

③ 気象庁HP

④ 気象予報士試験受験支援会:気象予報士かんたん合格テキスト〈学科・一般知識編〉(2008)

*大気の層の全体像を振り返りたい場合は、別頁「大気の鉛直構造① 概要」をご参照下さい。

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