大気層の別の見方① オゾン層

「天気を予測する」を目標に

成層圏を学ぶときに、オゾン層の学習は切っても切り離せません。オゾンの存在が、成層圏を定義づける温度変化(上空ほど温度が上昇する)を作り出すからです。

また、大気中にある100万個の気体分子のうちの1個であるオゾンがなぜ問題にされるかというと、オゾン層が太陽からの紫外線をほとんど吸収してくれているからです。強い紫外線は人間含め地球上の生物に有害となります。オゾンの出現は、「地球大気の起源」においても重要な過程です。

ここでは、オゾンの生成・分解とオゾン層の果たしている役割について詳しく学んでいきましょう。

オゾンの生成

酸素→オゾン

大気中の酸素(O₂)は、酸素原子(O)が2つ結合したものです。オゾン(O₃)は、酸素原子が3つ結合したものです。大気中のオゾンは、大気中の酸素から作り出されます。

酸素からオゾンを生成するときの行程は、2行程あります。

 O₂ + 光(紫外線240nm以下)→ 2O

酸素分子は、紫外線(波長240nm以下)を吸収して、2つの酸素原子に分裂する性質があります。これを光解離(photodissociation)といいます。

波長240nm以下の紫外線はここで吸収され使用されるのですが、この反応が大気上層で発生するため、波長240nm以下の紫外線は地球上には届きません。

 O₂ + O + M → O₃ + M

前の行程で生成された酸素原子(O)と、酸素分子(O₂)が結合してオゾン(O₃)ができます。ただしこの結合を起こすには、第三の分子(M)が必要になります。Mはなんでもよく、この結合を促進するための触媒に相当します。実際の大気では、窒素(N2)や酸素分子(O₂)がその役目をします。

オゾン→酸素

 O₃ + 光(紫外線240〜320nm) → O + O₂

生成されたオゾンは不安定な物質であり、波長240nm〜320nmの太陽紫外線を吸収してもとの酸素分子に戻ります。

この反応で波長240nm〜320nmの太陽紫外線は吸収され使用されるので、波長240nm〜320nmの太陽紫外線は地球上には届きません。

オゾン、生成、酸素、原子
オゾンの生成・分解
参考文献②を参照

すわなち、大気中では、以下の反応が連続して発生しています。

  1.  酸素が分解されてオゾンが生成される反応
  2.  オゾンが酸素に戻る反応

この2つの反応は、ここで書いてきたとおり、太陽の紫外線を吸収することで発生しています。このため、地上には波長300nmよりも短い波長の太陽光は到達しないのです。

成層圏にある気体分子の中で、オゾンが重要視される理由がここにあります。

紫外線とは

ここでは紫外線について簡単に触れておきます。

「光」は、私たちが目で見ることができる可視光の他に、波長の短い紫外線、波長の長い赤外線があります。可視光の中で一番波長が短いのは「紫」なので、それよりも短い光線という事で「紫外線/ultraviolet radiation(UV)」と呼びます。

紫外線、赤外線、可視光線
光(紫外線、可視光線、赤外線)

紫外線は、その波長域によって、UV-A、UV-B、UV-Cと分けられます。波長によって地上への到達量が変わってきます。

到達、紫外線、オゾン層、影響
地上に到達する紫外線
参考:NASA

太陽紫外線の暴露で、私たちはどんな影響を受けるのでしょうか?

波長の名称UV-CUV-BUV-A
波長域(nm)100〜280280〜315315〜400
地上への到達到達しない       オゾン減少により増加  常に到達
オゾン増減に影響されない
人体への悪影響 急性雪目(角膜炎)紅斑
免疫抑制
雪目(角膜炎)
黒化
薬剤性光線過敏症
        慢性非黒色腫型皮膚がん
白内障
翼状片
しわ
しみ
人体への良い影響ビタミンD合成
太陽紫外線の波長・特徴と、人体に対する作用
参考文献②を参考

太陽紫外線の増加は、人体だけでなく地球環境にも影響を及ぼします。この点については別の機会に改めて触れたいと思います。

参考文献

① 小倉義光:一般気象学, 第2版補訂版第5刷(2019)

② 筆保弘徳ほか:異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと, 初版(2014)

③ NASAホームページ:https://aura.gsfc.nasa.gov/ozone.html

*別頁「注意書き」をご一読ください

*大気の層の全体像を振り返りたい場合は、別頁「大気の鉛直構造① 概要」をご参照下さい。

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