大気の鉛直構造② 対流圏

「天気を予測する」を目標に

ここでは対流圏の特徴を学びます。

地球大気の最下層、地表に最も近いところにあるのが対流圏です。この層には、私たちが呼吸をする空気や、空に浮かんでいる雲などがあります。

対流圏(troposphere)の名前の由来としては、トロポ:回る、混ぜる(ギリシャ語)という意味があります。その名のとおり、いろいろな運動によって、圏内の空気がよく混ぜられていることが特徴です。天気を予測しようとするとき、この「いろいろな運動」を学んでいく必要があります。

「はしがき」で作成した高層天気図は、この対流圏内のものです。つまり、この対流圏における様々なデータを収集して、天気が予測されています。

より詳しくは、今後時間をかけて学んでいこうと思います。ここでは他の大気層と比べての内容になります。

①対流圏の厚さ

対流圏の厚さは、地表面から高度6〜16kmにあたります。なぜ厚さに幅があるかというと、空間的(緯度)、時間的(季節、時間帯)に高度変化をするからです。

■空間的

対流圏の厚みは、高緯度地方で小さく、低緯度地方で大きくなります。一般に、赤道付近で16〜17km、極付近で8〜9km、中緯度で11kmであることが知られています。

■時間的

同じ場所であれば、冬よりも夏、夜よりも日中(つまり気温が高いとき)の方が高くなります。同一質量のとき、温度が高いほど体積が大きいので、このような変化が生じます(後述)。

対流圏界面
参考資料:「気象予報士かんたん合格テキスト」

対流圏界面は、地球全体でひとつなぎになっているわけではありません。イラストのように、ところどころで不連続となっています。この不連続面の付近では、南北の温度傾度が特に大きいという特徴があり、前線帯に対応します。

②対流圏における運動

その名のとおり、対流圏は、水平方向の運動(ジェット気流)や、鉛直方向(上昇気流や下降気流)の運動が活発です。よく混ぜられています。

③水蒸気を多く含む

対流圏は、他の大気層よりも水蒸気を多く含みます。水蒸気は容積比で0.0〜1%の変動があり、時間的にも空間的にも含有量の変動が大きいという特徴があります。

④高度と気温の関係

地表面付近の気温は、地表面温度に大きく依存しています。地表面の温度変化に影響を与える大気層は、高度1500m未満までの層です。

対流圏では高度が1km上昇すると、気温が6.5℃の割合で下降します。気温減率6.5℃/kmと表現します。

詳細は熱力学の学習のときに記載しようと思いますが、暖められた空気塊が上昇し周囲の圧力が低下して、断熱膨張することによって気温は大きく低下します(ボイル・シャルルの法則)。

⑤空気量

対流圏には、地球大気全体の80%が存在し、また、成層圏+対流圏に99.9%が存在します。

気圧とは、その面の上にある空気の質量の和といえます。気圧は高さとともに対数的に減少します。5km高くなる度に半減し、高度10kmでは地上気圧の4分の1になります。

空気はこの最下層で最も密度が大きくなります。

なお、長距離旅客機はこの対流圏界面付近、高度10km付近を飛行します。世界最高峰のエベレスト(8848m)も、対流圏内にあります。

参考文献

① 小倉義光:一般気象学, 第2版補訂版第5刷,東京大学出版社(2019)

② 気象予報士試験受験支援会:気象予報士かんたん合格テキスト〈学科・一般知識編〉(2008)

*大気の層の全体像を振り返りたい場合は、別頁「大気の鉛直構造① 概要」をご参照下さい

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