ここでは熱圏の特徴を学びます。
地球大気のうち、中間圏の上にある層のことです。
熱圏(Thermosphere)の名前の由来としては、サーモ:熱という意味があります。その名の通り、高温の層です。
①熱圏の厚さ
中間圏界面(約80km)から熱圏界面(変動が大きく300〜600km付近)までの範囲にあります。熱圏よりも内側のどの層よりも厚いですが、外気圏ほど厚くはありません。
②熱圏の気温分布
気温は上層ほど高くなります。最下層の中間圏界面付近では約−90℃と低温ですが、上層では2000℃に達することもあります。
これは主として波長が0.1µm以下の紫外線を、熱圏にある窒素や酸素が光電離で吸収するためです。
太陽からの放射エネルギーのうち、紫外線の割合は約10万分の1しかありません。それなのになぜ熱圏がこれほどまでに高温になるのでしょうか?それは、熱圏にある空気の量が、大気総量の10万分の1しかないからです。『成層圏』で軽く触れた、熱容量の考え方ですね。したがって、少ない紫外線でも熱圏の温度を十分高めることができます。
特徴:熱圏は高温だが、空気は非常に薄い(密度が小さい)
この場合に何が起こるかというと、私たちが熱圏で過ごしたと仮定したとき、体感としては非常に寒く感じます。これは、気体分子・原子が熱をもって動き回っているものの、分子・原子の密度が小さすぎるために、私たちの皮膚に衝突する数が圧倒的に少ないからです。
また、分子・原子どうしが相互に衝突することも少なくなり、一度衝突すると、その後はかなりの距離を衝突せずに飛び回ることができるようになります。
熱圏の上部には、このようにして下層で一度衝突しただけでやってきた分子・原子が大部分です。つまり、下層にいたときの温度をそのまま保存して上層にやってくるので、熱圏の上部は等温となります(イラスト参照)。
先に述べたように、熱圏が高温なのは太陽の紫外線を吸収した結果です。そのため、熱圏の温度は紫外線の強さの影響を受けます。たとえば日中と夜間では数百度の温度差があります。また、イラストに示したように、太陽の活動が盛んで紫外線強度が強い年には約2000Kの高温となりますが、太陽活動が弱い年には約500K程度までしか上昇しません。
③熱圏の運動、大気組成
高度80km以下の層(成層圏界面以下)では、大気はよく混ざっており、大気中の分子の比率は一様でした。
熱圏は、窒素と酸素で大気が構成され、水蒸気は存在しません。
熱圏の運動については、現在研究が進められているところのようです。
④熱圏で起きる現象
オーロラについては、別項で取り上げたいと思います。
- オーロラ
- 国際宇宙ステーション(ISS;International Space Station)が飛翔している
- 低軌道衛星の高度
国際宇宙ステーション(ISS)の本拠地
2011年7月に完成した国際宇宙ステーション(ISS;International Space Station)が飛んでいる高さです。
ここまでは、温度変化を基準にした大気の鉛直構造について、学んできました。
次は、オゾン層、電離層について掘り下げていきます。
参考文献
① 小倉義光:一般気象学, 第2版補訂版第5刷,東京大学出版社(2019)
② NASAホームページ
*大気の層の全体像を振り返りたい場合は、別頁「大気の鉛直構造① 概要」をご参照下さい。